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ボッテガ・ヴェネタ ダニエル・リー期の見分け方

2026年9月10日

ダニエル・リー期のボッテガ・ヴェネタとは、2018年から2021年まで、デザイナーのダニエル・リーがこのブランドの服と鞄を手がけていた3年あまりのこと。ロゴをひとつも出さないまま、編み込みの大きさと色だけでブランドが見分けられるようになった時期です。

この記事では、この3年に生まれた形の名前、作風が動いた順番、そしてお手元の品がダニエル・リー期のものかを確かめる手がかりを書きます。ボッテガ・ヴェネタの服や鞄をお持ちで年代が分からないという方はもちろん、この3年のデザインそのものを追いかけている方にも役に立つはずです。

ダニエル・リー期ボッテガ・ヴェネタとは?

前任の17年と、止まっていた成長

リーの前は、トーマス・マイヤーが17年にわたってこのブランドを手がけていました。控えめで、上品で、静かな服です。長く売れ続けましたが、近年はその伸びが止まっていました。

鞄が売上の85%を占めるブランドに、プレタポルテのデザイナーが呼ばれた

ここで押さえておきたい数字がひとつあります。当時、このブランドの年間売上の85%は鞄が占めていました。革の編み込みで知られたブランドですから、当然といえば当然です。

そこへ来たのが、プレタポルテのデザイナーでした。前の職場はセリーヌ。フィービー・ファイロの下で服の部門を率いていた人で、名前を知る人はほとんどいませんでした。

ダニエル・リー。赤みのある髪で、肩に布をかけた紺のニットとジーンズ姿で歩いている
ダニエル・リー 2018年から2021年まで、ボッテガ・ヴェネタのすべての部門を手がけました。写真は在任中の2019年。この3年のあと、バーバリーへ移っています。 写真:Tommy Ton(2019年)/CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons

任された範囲は鞄と革小物にとどまりません。服、靴、宝飾、家具、香水、眼鏡まで。売上の85%を鞄が占めるブランドで、服を作ってきた人が鞄まで含めてすべてを決めることになった——これがはじまりの状況です。

就任から1年ほどで、既製服の売上は大きく伸びました。彼が去る直前の四半期も、前の年を上回っています。

3年でこれだけのことが起きています。短いので、年で追うと何をどの順でやったのかがはっきり見えます。

2018年6月
就任。最初のコレクションはショールームでの発表だった
2019年2月
ミラノで初めてのランウェイ。全身を革で覆った上下で空気が変わる
2019年
編み込みを大きくする(マキシ・イントレチャート)。パウチとスクエアトゥ
2020年
ボッテガ・グリーン。編み込みを膨らませ、やがて裏地をなくす
2021年
ミラノの日程から降りる。ロンドン、ベルリン、デトロイト。SNSのアカウントを消す
2021年11月
退任。3年で12のコレクションを残した
日程から降りた3年目 始まりと終わり

空気が変わった、最初のランウェイ

全身を革で覆った上下

最初のコレクションはショールームでの発表でした。翌年2月、ミラノで初めてのランウェイを行います。ここで空気が変わりました。

全身を革で覆った上下。小さな四角に切り抜いた革をつないだスカート。キルティングした細身のコートに、鎖のベルト。当時の評には、やりすぎだという指摘もありました。股のところを装飾用の鎖で留めるスカートは凝りすぎだ、全身革の上下はそのまま過ぎる、と。

濃い茶色の革のジャケットと革のパンツで全身を覆い、黒いブーツを履いてランウェイを歩く一着
2019年秋冬
「そのまま過ぎる」と書かれた全身革の上下。前の17年とは空気が違います
小さな四角につないだ革のスカートの腰に、太い金の鎖を回した一着
同じショーから
四角くつないだ革と、腰の金の鎖。「凝りすぎだ」と名指しされたのがこの型です

前のボッテガよりも、行儀が悪かった

それでも同じ書き手は、前のボッテガよりも、そして彼が前にいたブランドよりも行儀が悪いと書いたうえで、その変化を歓迎しています。17年かけて積み上げられた「行儀のよさ」は、3年で置き換えられました。

ダニエル・リー期ボッテガ・ヴェネタの革のパンツ。膝に立体の切り替えが入り、裾にジップが付く
当店で扱った、膝に立体の切り替えを入れた革のパンツ

このブランドには古い社訓があります。「自分のイニシャルだけで十分」。頭文字も紋章も出さない、という意味です。ロゴを使わずに、どうやって見分けがつくようにするか。答えになったのが次の3つでした。

赤い革を太く粗い格子に編み、ふっくら膨らませた鞄を腕に抱える手元
大きくした編み込み
目が細かく上品だった格子が、通りの向こうからでも分かる太さになりました
彩度の高いライムグリーンのリブ編みのワンピースに、同じ色の長いフリンジが下がった一着
ボッテガ・グリーン
この色が、ほとんど一夜にして呼び名になりました。背景にも同じ色が続いています

マキシ・イントレチャート——編み込みを大きくする

元からあった革の編み込み(イントレチャート)を、極端に大きくしました。本人はのちに「爆発させた」と笑いながら話しています。目が細かく上品だった編み込みが、太く、粗く、はっきりした格子になりました。狙いどおり、通りの向こうからでも分かります。

パウチとスクエアトゥ

形の名前も生まれました。腕に抱えるように持つ、枕のような形の鞄がパウチ。つま先を四角く切り落とし、丸く膨らませた靴がスクエアトゥです。この2つは、発表から1年もしないうちに百貨店が在庫を切らす状態になりました。ロゴをひとつも付けずに、形の名前だけで指名買いされる品になったということです。

つま先を四角く切り落とし、丸く膨らませた形の厚底のブーツ
スクエアトゥ
つま先の形そのものが、名前になりました
編み込みの革で作られた、つま先の丸い茶色のブーツ
編み込みの靴
鞄の意匠が、そのまま足元にも回っています

ボッテガ・グリーン

3つ目は色です。彩度の高いライムグリーンが、ほとんど一夜にして「ボッテガ・グリーン」という呼び名で通じるようになりました。ブランドがひとつの色を自分のものにするには、ふつう何年もかかります。ロゴを出さないブランドが色で見分けられるようになった——古い社訓と一直線につながる出来事でした。

ブランドの立て直しかたは、ひとつではありません。トム・フォード期のグッチは、逆にロゴと過去の意匠を前面に出して10年で建て直しました。並べて見ると、この3年がどれだけ違う道を選んだかが分かります。

編み込みが変わった三段階

編み込みの扱いは、3年のあいだに三段階で動いています。

一段階目——大きくする

目を極端に粗くして、遠くからでも見えるようにしました。

二段階目——膨らませる

編んだ革に中綿を入れ、空気を含んだような厚みを持たせています。鞄ではカセットがこの形です。同じ手つきで、光沢のある革のコートも作られました。

中綿を入れて膨らませた灰色の編み込みの鞄を、手に提げている
膨らませた編み込み
一目ずつが空気を含んだ厚みを持っています
同じ膨らみを服に応用した、水色の光沢のあるロングコート
同じ手つきの服
鞄で試した膨らみが、そのままコートに移っています

三段階目——裏地をなくす

革の紐を両面仕上げにして、裏地を付けずに縫っています。外から見える編み目と、内側から見える編み目が、同じ精度で揃っているということです。

三段階目が、この期をいちばんよく表しています。ふつうは見えない場所を、見える場所と同じ手間で作る。例えば、鞄の口を開いたときに、外側と同じ編み目がそのまま内側にも続いている——買う人が気づかないかもしれない場所に、いちばん手が掛かっているということです。

後半には、この姿勢が数字で公開されます。ガラスの粒を手で編み込んだドレスは1着あたり百数十時間から二百数十時間、白黒の縞のコートは刺繍機で数百万針、羽根の刺繍には百時間以上。手間を隠さず、表現する側に回りました。

男性物と女性物の関係

最初は、男性物のほうがスポーティだった

最初のコレクションでは、女性ものと男性ものではっきり性格が違いました。女性ものが黒のジャケット、キャメルのコート、絹のブラウスといった落ち着いた組み立てだったのに対し、男性ものはずっとスポーティです。肘に立体の切り替えを入れた革のジャケット。膝に同じ処理をしたスウェットのパンツ。仕立てた上着の代わりに置かれた、大きめの厚手カシミアのシャツ。

黒い革のジャケットに白いトップスを合わせ、ゆったりしたパンツを穿いた男性
最初のコレクション・男性物
革とスポーツの要素。仕立てた上着は置いていません
黒いジャケットに白いスカートを合わせ、鞄を持った女性
同じコレクション・女性物
黒のジャケットに白のスカート。こちらは落ち着いた組み立てです

途中から、男女を分けなくなった

この差は、途中からなくなっていきます。後半は男女を分けず、ひとつのコレクションとして発表するようになりました。

作風そのものも動いています。前半は硬く、構築的でした。革、仕立て、はっきりした輪郭。後半は手ざわりのほうへ移り、極太の糸で編んだニットや、粒を手で編み込んだ布が主役になります。

日常の服の形式を、いちばん高い技術で作る。3年を通して変わらなかったのは、この一点でした。

ミラノの日程から降りた3年目

ロンドン、ベルリン、デトロイト

2020年、リーはミラノの発表日程から降りることを決めます。決められた時期に決められた場所で見せるのをやめ、好きな街で、少人数の、居間のような規模のショーを行う形に変えました。

1回目はロンドンでした。客席を舞台の上に作り、光と音に包まれた中を、間隔を空けて並べた椅子の間を縫うようにモデルが歩いています。2回目はベルリンのクラブ。3回目はデトロイトの、かつて映画館だった建物でした。1920年代、自動車産業の好景気のさなかに四千席を超える規模で建てられ、街が衰退した70年代には立体駐車場に改装された建物です。

虹色に光る会場を、間隔を空けて並べた椅子の間を縫うようにモデルが歩いている
1回目・ロンドン
光に包まれた中を、椅子の間を縫って歩きます
階段状の客席に囲まれた暗い会場を、黒いスーツの男性が歩いている
3回目・デトロイト
背景の段になった客席が、映画館だった建物の名残です

なぜデトロイトだったのか。理由は本人が2つ話しています。ひとつは「自分の出身の街も、国の工業地帯の中心だった。だから通じるものを感じる」。もうひとつは、その街がテクノの生まれた場所で、自分はその音楽を聴いて育ったから。

SNSのアカウントを消した

この3回のうち、1回目と2回目のあいだにあたる2021年の初めに、彼はブランドのSNSのアカウントをすべて消しています。フォロワーが数百万人いたアカウントでした。ブランドからの説明はありません。

コレクションスケジュールから降り、それから画面から降りた。「自分のイニシャルだけで十分」という古い社訓を、ここまで押し進めた3年でした。

退任の経緯と、12のコレクション

3回目のショーから1か月足らずで、ブランドは彼との別れを発表します。2021年の11月です。

発表は、アメリカの大きな賞の授賞式の数時間前でした。彼はその年、男女2つの部門にどちらも候補として名前が挙がっています。2週間後にはロンドンの賞でも候補でした。業績も良く、退任直前の四半期は前の年を上回っています。

ブランド側の発表は「双方の合意による」というものです。理由の説明はありません。デザイナーの交代は事前に噂が流れるのが普通ですが、このときは流れませんでした。後任のマチュー・ブレイジーが発表されたのは、その5日後です。

就任から退任まで、3年と数か月。この間に発表されたコレクションは12あります。

紺のシャツとパンツを着た男性が、ショーの最後に拍手へ応えている
後任のマチュー・ブレイジー 2021年11月に後任として発表され、翌年の秋冬で初めてのショーを行いました。写真はその回の最後、挨拶に出たところです。ここから先の品は、もうこの3年のものではありません。

この時期の品を見分ける手がかり

鞄は、形の名前で呼ばれる

鞄から書きます。このブランドの鞄は、形の名前で呼ばれます。誰が作ったかは、ほとんど書かれません。

そのため、いま市場に並んでいる編み込みの鞄には、20年以上にわたる3人の作り手の仕事が、同じ棚に混ざっています。2000年代初めに生まれた形も、この3年に生まれた形も、その後に生まれた形も、見た目は同じ「編み込みの鞄」です。

手がかりになるのは、その形の名前です。この3年に生まれたのは、パウチ、カセット、アルコ、ジョディ。いちばん古くからある「カバ」は2000年代初めの、前任者の仕事です。名前が分かれば、いつの仕事かも分かります。

服は、5つの目印で見る

服のほうが、まだ見分けられます。目印になるのは、例えばこういうところです。

背中を深いV字に開いた黒いニット。開いた部分に細い紐の飾りが渡っている
V字は、あちこちに出てくる 背中を深いV字に開いた一着です。V字は上着の留め具の形にも、ポケットの形にも繰り返し使われました。服を裏返して、後ろ身頃の切り替えを見てみてください。

3年前後という新しさが、そのまま手がかりになる

そして、この時期ならではの手がかりがもうひとつあります。2018年から2021年という、そう遠くない話だということです。

90年代や2000年代の品だと、いつ買ったかを思い出していただくのが難しいことがあります。年代の分からない品をどう辿るかは、ガリアーノ期ディオールの記事にも書きました。けれどこの3年のものなら、購入時の控えや注文の記録が残っていることが少なくありません。買われたお店が分かるだけでも、絞り込みはずいぶん楽になります。

ここまで挙げたどれも分からなくても、まったく問題ありません。お写真だけ送っていただければ、あとはこちらで突き合わせます。

この時期の服を、写真で見る

編み込みの目の大きさも、裏地の作りも、写真のほうが早く伝わります。

Instagram @kaitori_reon →

中古市場での評価と、鞄に偏る需要

誰の手によるものかを、書く欄がない

機械的な一括査定に、この3年かどうかの差は反映されません。誰の手によるものかを書く欄が、最初から用意されていないからです。選べるのはブランドと種類と状態だけで、その3つが同じなら、17年前の一着もこの3年の一着も同じ値になります。

状態の見方も同じです。革の上着は、少しの型崩れや擦れで値を大きく落とされることがあります。当店では、状態を理由に一律でお断りすることはしていません。

当店は査定して終わりではなく、引き取った品を自分たちの手で売り場に並べています。どこに出したときに、その一着がいちばん高く扱われたか。その実績を持っていることが、値付けの裏づけです。

この時期の品ならではの、よくあるご質問

2018年から2021年という新しさゆえに、ほかの年代の品とは違うご質問をいただきます。

この記事では触れませんでしたが、彼が前にいたセリーヌ——フィービー・ファイロが手がけていた時期についても、いずれ別に書く予定です。この3年を理解するうえで、切り離せない話だからです。

買取の方法

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福知山市・綾部市・舞鶴市・宮津市・与謝野町・丹波市(兵庫)へお伺いしています。日程は事前にご相談のうえ調整いたします。

お品物を運び出す必要がありません。衣類・バッグ・小物・美術品などが対象です(家具・家電は承っておりません)。

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遠方の方は宅配買取をご利用ください。送料は当店が負担します。梱包材はお手数ですがお客様のほうでご用意をお願いしています。

いずれの場合も、まずはお写真をお送りいただければ、おおよその金額をお伝えできます。シャツ1枚、ニット1枚からでも構いません。「これは値段が付かないと言われた」というお品物こそ、一度ご相談ください。

まずはお写真をお送りください
査定は無料です。年代やブランドが分からないままで構いません。
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ロゴの無い一着ほど、誰が作ったのかを見てから値を付けます。